展示品ギャラリー
豊原国周:開花人情鏡 秋雨
幕末から明治初期に活躍した豊原国周の「開花人情鏡」シリーズで、明治11年(1878)の作。
突然の夕立にあい、幼児を背負って駆け出す女性。眉をそり、お歯黒をつけている。腰にさすのは煙草入れと煙管か。
左上の詞書で長谷河一嶺は、「夕立や田を三めぐりの土手通り。
ぬれて行く身か戻る身か。恋には厭ぬ走り筆。書く文ならで大空に。すり流したる隅田川。吾妻こひしの森近く。一羽離れし都鳥。浮薄(うい)て見ゆれど其身にハ。沈む待乳の鐘が淵。心ろも□しやしら髭の。晴れぬ懐ひの有りやなしやと」と、隅田川や吾妻橋、待乳山、鐘淵など、東京・浅草近辺の地名を読み込んでいる。