展示品ギャラリー
風俗三十二相「じれったそう 嘉永年間鳶妻の風俗」
月岡芳年「風俗三十二相」シリーズの第19作目「じれったそう、嘉永年間鳶妻の風俗」。
町火消しも兼ねた鳶職の女房が若い者たちを叱りつけている姿だろう。
お歯黒をつけ眉毛を剃るのは既婚者のしるしでもある。
剃り跡には青黛で眉をひき、手にした煙管(きせる)は、羅宇(中の竹の部分)を朱に染めた長ギセル。
表題の「鳶妻」には「あねご」とルビがふられている。左側には「纏(まとい)」と染め出した江戸火消しの装束、袢纏がかかる。
男伊達を競う火消し頭は、相撲力士、奉行所与力と並んで、「江戸の三男」とも呼ばれた。
最後の浮世師とも称えられる月岡芳年は、明治21年に「うるさそう寛政年間処女(おとめ)之風俗」から「遊歩がしたそう明治年間妻君之風俗」まで32枚の連作浮世絵に、江戸後期の女性風俗を描き島鮮堂から板行した。
嘉永年間は西暦1848~54年で、1853年にはペリー艦隊が江戸の海上に来航し泰平の眠りを覚ます。
それから15年、幕末の年号は安政、万延、文久、元治、慶応と変わり、1868年に明治へ改元された。