展示品ギャラリー
木床(もくしょう)義歯
近代歯科医学の祖であるフランスのピエール・フォシャールは、1728年に『外科歯科医、もしくは歯の概論』のなかで初めて総義歯について記述したが、それは脱落しないよう上顎と下顎の義歯をバネで連結したものだった。
フォシャールより200年以前に日本では、上顎に吸着する木の義歯が製作されている。
この木を土台(床)とした日本固有の総義歯は、上顎の形態に適合する義歯をつくれば脱落しないというもので、これは現在の総義歯の原理でもある。
実際に実用化され、普及したのは江戸時代後期の19世紀初頭からだが、蜜ロウで歯ぐきの型を採り、それに合わせてツゲの木を彫って土台(床)を作り、前歯にはロウ石や象牙を用い、奥歯の部分には噛めるよう、鋲(ケンピン)を打った。