日本歯科大学新潟生命歯学部 医の博物館

展示品ギャラリー

新柳二十四時 午前八時

新柳二十四時 午前八時

「最後の浮世絵師」と謳われ、幕末から明治中期まで活躍した月岡芳年(1839-92)の連作「新柳二十四時」の「午前八時」。

この連作では新橋と柳橋の芸妓たちの姿を、午前一時から午後十二時まで24枚の浮世絵に見立てた。
詞書を誌した「足萩翁」については不明だが、「足萩」とは盗人の異称で、戯作者の洒落だろう。
初冬の暖かい朝に、芸妓が当時の歯ブラシ「房楊枝」で歯を磨く姿を描いている。浮世絵師たちは、朝起きぬけに歯を磨いたり、化粧したりする若い女性の姿を好んで題材とした。

新柳二十四時 午前八時
小春日和の暖かき
返しを寒き木枯らしの果ハありけり海面(うなづら)の
軍(いくさ)を習ふ湾に近き 三等煉瓦の陣営に
船底枕(ふなぞこまくら)の纜(ともづな)を解(とき)
火力を焙して進撃するぞ
江水之が為に湧き 闘戦数刻に及びし後
労(つか)れて眠れハ冬の夜も短く思ふを軍吏(だんつく)の
出省(おいで)の前に揺覚(ゆりさま)され
観劇(しばいミ)ならぬ早起(はやおき)を
呟く間(ひま)に日ハ丈(たけ)て
朝餐(あさげ)の支度も稍調(ややととの)ひぬ
足萩翁戯述